英語の授業ではワークシートを使うべきです。ワークシートを使うことで、授業を英語で行いやすくなることに加えて、担当者間のチームワークが生まれ、人間関係も円滑になります。
ワークシートがとてもメリットのあるものだというのはわかったけれど、どのようなワークシートを作れば良いのかアイデアが浮かばないという人はこの記事を見て、ご自身のワークシート作りの参考にしてください。
Contents
ワークシートのOutline
検定教科書の使用をしなければならないことを考慮すると、教科書の本文を扱うことが授業の中心になると思われます。もちろん本文の内容に基づいて、リスニングやライティング、スピーキングの活動を行っていきますが、教科書を使う場合、それらの活動の根幹になるのがリーディングです(高校の場合は、コミュニケーション英語を想定しています)。リーディングと言っても文法訳読式で教えるのではなく、英語を英語のまま理解させなければなりません。
指導対象の学年や英語の習熟度によって、ワークシートの詳細は変わってきますが、ベーシックなものは、以下のセクションが含まれます。
1.Pre-reading
導入で背景知識の活性化し、本文を読みやすくする。
2.Outline
概要をつかむ。詳細にはこだわらず、メイントピックや大まかな内容を理解する。
3. Comprehension
本文の詳細を理解する。より深い内容、細かい情報を読み取る。レベルによっては、推論発問にも取り組む。
4.Reading Practice
音読を通して、本文の内容や表現の定着させる。
5.Retelling
本文の内容を自分の言葉で再生する。
6. Output
本文を通して学んだことに関連した自己表現活動やコミュニケーション活動を行う。
Pre-reading
いきなり教科書を読み始めるのではなく、本文の内容理解に必要な背景知識を活性化させることで、本文を読みやすくしてあげます。絵や写真などを用いて、生徒とインタラクションを行ったり、本文に関連するトピックを与えて、Warm-up活動を兼ねて、ペアで会話させたりすることが考えられます(スピーキング活動の流れはこちらをご覧ください)。以前紹介したPicture Descriptionを行ってもいいでしょう。絵や写真は印刷すると不鮮明なったり、小さくて見えにくかったりすることもあるので、ワークシートには載せず、プロジェクターに映すだけでもいいかもしれません。
生徒の習熟度が高かったり、扱われている内容が生徒になじみ深いものであれば、このセクションにあまり時間をかけなくていいでしょう。あるいは、何も支援しない状態で、初見で読ませたいという意図がある場合は、Pre-readingの省略することもあります。
Outline
ここでは、本文全体の大まかな流れをつかむことが目的です。何について書かれているのか、どんな主張がなされているのかなどを把握させます。色々な形式が考えられますが、概要把握ができているかを確認するTF問題に取り組ませたり、グラフィックオーガナイザーを使って、視覚的に内容を理解させる方法があります。また、TANABU Modelで利用されているParagraph chartも本文理解の役に立ちます。
以下の書籍には、グラフィックオーガナイザーなどの英語を英語で読ませるためのアイデアを得ることができます。
Comprehension
ここでは、Outlineで概要を把握したあとに、本文の内容を詳しく、深く理解させていきます。英問英答の問題を複数答えさえせる形式でいいと思います。生徒の習熟度によっては、文中に答えは書かれてないけれど、読んだ情報を基に答えを推測させる推論発問を入れることもできます。
内容理解のために必要な文法項目をこのセクションで扱うこともあります。
Reading Practice
音読をすることで、本文の内容を確認し、文法や語彙、定型表現の定着をさせていきます。また、文字情報と音声を統合させていきます。時間の許す限り何度も声に出させて本文を読ませるべきですが、Chorus Readingだけでは単調過ぎて生徒も飽きてしまうので、お音読の様々なバリエーションを用意しておきましょう。
発音を確認しておきべき新出単語があれば、音読の前に生徒に練習させましょう。
Retelling
Retellingとは、絵や写真、キーワードを参照しながら本文の内容を自分の言葉を使って本文の内容を説明する活動のことです。Retellingは、読んだ内容の整理をするのと同時に、英語のスピーキング能力を高めることができます。
最近では、ほとんどの教科書が各レッスンの終わりにRetellingを扱っているので、教科書のものをそのまま使っても良いのかもしれませんが、パートごとに分かれていない場合は、オリジナルのRetellingセクションをワークシートに入れるべきでしょう。1レッスンまとめてのRetellingは生徒にとってかなり負荷が高いため、中途半端なRetellingになってしまう恐れがあります。慣れてくれば、1レッスンまとめてRetellingさせてみてもよいかもしれませんが、ほとんどの生徒は各パートごとのRetellingをするだけで精一杯だと思います。
Output
ワークシートを進めていくと、何度も繰り返し本文を読むことになり、(ときにはアウトプットをはさみながら)十分なインプットがされています。読んだ後の活動として、教科書を読んで学んだことを利用してアウトプット活動を行います。
ここで、行われる活動としては、スピーチ、プレゼンテーション、ディベート、ディスカッションなどが挙げられます。自分の意見を書かせるライティング活動も考えられます。
ただし、Outputのセクションはワークシートに組み込まず、パフォーマンステストとして扱うこともできます。
まとめ
今回は、英語の授業で使うワークシートの構成について確認しました。必ずしもこの形式に従う必要はなく、生徒の実情に合わせて、モデルチェンジしていくことをお勧めします。例えば、Retellingを省力して、もっと音読に時間を割く場合もあるでしょう。同様に、各セクションの分量やレベルを調整していくことも必要です。
ワークシートは、授業の型を表すということを以前書かせてもらいました(英語の授業ワークシートを作ろう)。これまで見てきたワークシートの構成は、授業の流れそのものです。そして、ワークシートのもう1つの役割は、生徒が教科書本文の内容を理解するためのScaffold(足場)なのです。つまり、掲載されている活動に取り組みながら、生徒が内容理解を深めていけるワークシートが理想的なのです。