英語学習

英単語の覚え方

英単語をどうやって効率的に覚えれば良いのかというのは、英語学習者とって切実な問題であり、生徒から「単語はどうやって勉強したらいいのですか?」という質問をされたことがない英語教師はいないでしょう。

自分の経験を基にして、勉強方法を伝える先生が大半だと思いますが、それが100%正しいと自信を持って生徒に伝えられる先生は少数なのかもしれませんし、自信があったとしても、その根拠になっているのは、自分だけの成功体験だけであって、エビデンスが不十分がある場合がほとんではないでしょうか?

外国語の語彙はどうやって習得するべきなのかという研究はかなり行われていて、これまでに多くのことがわかっています(語彙習得研究と言います)。この語彙習得の知見を基に、生徒の質問に答えられるとかっこよいでよね。

学習・テスト一致の原則

学習の状況とテストの状況が近ければ近いほど、学習効果が高くなる現象を「学習・テスト一致の原則」と呼びます。例えば、英単語を見て、日本語訳を答えるテストに向けて勉強するには、英単語見て日本語を答える学習が効果的であり、日本語訳を見て英単語を答える勉強では高い学習効果は期待できません。受験勉強として英単語を学習するのは、大抵の場合、長文を読めるようにするためであることを考えると、英単語を見て日本訳を言う学習をするべきです。単語の学習というと、何度も書いて覚えようとする人がいますが、あまり勧めしません。単語を書く方法は、受験勉強的な視点から、「学習・テスト一致の原則」から外れてしまいますし、同じ単語を何度も書くと言うのは、後述する「集中学習」に分類されるので、効果的ではありません。付け加えると、書いて覚える方法は、単語の意味を覚えるのを阻害する可能性があると言う研究結果もあります。

英語-日本語で覚える

「英単語は文脈で覚える方が効率的である」と言う主張もありますが、これまでにわかっていることは、英単語は、日本語訳と対にして覚えるのが最も効率的であると言うことです。したがって受験勉強という視点から見ると、市販の単語帳などを使ってコツコツを覚えいくのが良いでしょう。ただ、注意して欲しいのは、『速読英単語』のような単語集が役に立たないということではありません。覚えた単語が使われている英文を読むことで、その単語が持つニュアンスがわかり、記憶への定着度が高まります。

テスト効果

 では、単語帳をどう使っていけば良いでしょうか。日本語訳を隠して、英単語をだけを見て訳を言えるかをテストしていきましょう。この際、あまり時間を掛けすぎないようにしてください。1つの単語につき5秒程度でどんどん進めて良いでしょう。こうしたテスト形式での学習は、単語と日本語訳をただ眺めているだけの場合よりも、単語の定着率が飛躍的に上がります。単語とその訳を眺める学習を繰り返してもそれほど学習効果がない一方で、テストの回数を増やすと学習効果が上がるという研究結果があります。要するに、テスト自体が記憶の定着率を高めると考えられます。これは「テスト効果」と呼ばれています。

最適な学習回数は5回(1つの目安として)

単語帳を使って学習する場合、英単語は少なくとも5回は繰り返し学習した方が良いのかもしれません(ちなみに「文脈で覚える」場合には、12回程度その単語に触れる必要があると言われています)。被験者を1回・3回・5回・7回のグループに分けて英単語を学習させ、事後テスト受けさせた研究があります。1回と3回のグループよりも、5回のグループの正答率の方が高かったのですが、5回と7回に統計的に有意な差はありませんでした。つまり、6回学習と5回学習に定着度の差がなければ、5回学習すれば良いと言うことになります。ただ、5回と言うのはあくまでも1つの目安です。記憶力には個人差がありますし、覚え易い単語と覚えにくい単語も存在します。1回で覚えられるなら何度も反復する必要はないですし、10回以上繰り返さないといけない場合もあるかもしれません。

分散効果

単語の勉強に限らず、学習には「集中学習」と「分散学習」があります。「集中学習」というのは、例えば、dogという単語の意味の確認を、間隔を開けずに続けて4回行うことです。「分散学習」はdogという単語の意味の確認を、10分間隔で1回ずつ行うことです。直感的に「集中学習」の方が効果がありそうですが、様々な研究によって、「分散学習」の方が記憶保持を促進することがわかっています。したがって、1つの単語を覚えるための1回の学習に時間をかけ過ぎてはいけないと言うことです。言い換えると、仮に、dogという単語を覚えるために、1回2分で学習するより、同じ時間でも、30秒4回で学習する方が効果があると言うことです。なかなか覚えられない単語を何度も書いて覚えようとするのは、「集中学習」に分類されるので、記憶保持には逆効果と言うことになります。

 なお、学習中は、「集中学習」の方が、「分散学習」よりもしっかり身についているように感じられるのですが、それは錯覚に過ぎないと言うことに注意してください。

1度に学習する単語数に制限はない

50語の単語を覚えるために、5日間で1日10語ずつ覚えていくのと、5日間毎日50語を学習するのは、同じ学習時を費やすとして、どちらが効果的でしょうか?すでに述べた分散効果を踏まえると、毎日50語に触れた方が記憶されやすいでしょう。ちなみに、一度に学習する単語の数は記憶保持に影響しないので、10語でも100語でも差はありません。1日どれだけ覚えようとするかは、単語学習にかけられる時間や集中力の問題になるでしょう。

参考文献

中田達也. 英単語学習の科学, 研究社,2019.

この本は、第2言語習得理論の知見に基づいてどのように単語を勉強すべきかが説明されているので、英語の先生は一読しておくことをお勧めします。

また、こちらは、同じ著者による新書ですが、英語学習における定型表現の重要さがのべられていました。定型表現には、イディオム、コロケーション、句動句、慣用表現など含みますが、これらの違いを説明できない先生は、この本を読むと、これらの違いがわかります。

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