英語を身に付けるためには、大量の理解可能なインプットが必要です。そして、生徒のインプットを増やす手段として、多読(Extensive Reading)にはぜひ取り組ませるべきです。今回は多読の効果について説明していきたいと思います。
多読の必要性を理解してはいるけれど、生徒への説明の仕方が難しいと感じる先生は、この記事を参考にしてください。
Contents
精読と多読
前提として、学習目的として「英文を読む」ということは、大まかに精読(Intensive Reading)と多読(Extensive Reading)に分けられます。英語の読解力を高めるには、精読と多読が必要です。どちらの方が大事だということではなく、両方行うことで英語を正確に読む力や流暢さ、語彙力を高めていきます。まず、それぞれどのような目的があるのかを確認していきましょう。
精読(Intensive Reading)
英語学習における精読の目的は、自分の力よりもやや高いレベルの英文を、知らない単語や文法、内容を学びながらじっくり読むことで、英語を正確に読む力を高めていくことです。学校の授業では、ほとんどの場合、精読で教科書を読んでいるでしょう。大学入試問題の演習も精読が行われていることが多いですね。
多読(Extensive Reading)
多読の目的は、英語を読むスピードを高めたり、語彙の習得や定着をはかることです。理解可能なインプットを十分に確保し、英語力ある程度のスピード保って読み進めることができ、すんなり頭に内容が入ってくる英文を大量に読むことで、理解可能なインプットを大量に行っていきます。多読では、自分の力よりもやや低いレベルの英文をどんどん読み進めていきます。
インプット不足を解消するための多読
みなさんが教えている生徒は、年間どのくらいの英語を読んでいるでしょうか?よく言われているように、中高生を含む多くの英語学習者は、このインプットが圧倒的に足りていません『英語学習の科学』には、中高英語教科書の総語数は、約50000から60000語程度(中学3年間で12000~17000語、高校3年間で38000~47000語程度)しかなく、この読書量では、英語の「初級者」レベルを超えられません。ちなみに、「中級者」になるには、教科書(60000語)以外に、78000語読む必要があります。一番上の超上級者になるために読書量は、2230000語だそうです。
また、教科書を読むだけでは、精読にしか取り組まない可能性が高く、スピードがない、アンバランスな読解力になってしまいます。つまり、教科書を読むだけでは英語の読書の質。量ともに不足しており、英語の力がなかなかみにつきません。この不足を補うために、多読に取り組むのです。
多読(=大量のインプット)の効果
冒頭でも述べたように、英語を身に付けるためには、大量の理解可能のインプットが必須条件になります。多読を行うことで、大量の理解可能なインプットができ、リーディング力以外にも、スピーキング力、ライティング力、リスニング力や文法力も伸びていきます。言い換えると、充分なインプットがなければ、他の技能も一定のレベルで止まってしまうということです。従って、生徒に是非多読に取り組ませるべきです。
多読の本の選び方
大前提になるのは、スラスラ読める簡単な本を選ぶことです。具体的には、1分間に80~100語程度の速さで読むことができ、辞書なしで、90%以上理解できるレベルです。最初のページを読んでみて、理解に時間がかかったり、わからない単語が多い本は、避けるべきです。
そして、多読でよく言われているのが、自分が興味がある本を読むということです。読み始めて面白くないと思ったものは途中で止めて、本を変えて構いません。
ちなみに、多読の目的を理解できずに、精読が必要なレベルの難しい本に挑戦しようとする生徒が必ず存在しますが、そういう生徒には多読の目的を再度説明する必要があるでしょう。
辞書使用について
辞書は使わないことが望ましいですが、個人的には、必要に応じて使用しても構わないと思います。例えば、何度も出てくるのに、意味が推測できなかったり、どうしても意味が気になる語があったときは、辞書で意味を確認すると良いでしょう。ただし、辞書を引く回数が多くなって、読書の流れを止めてしまうようだと、その本はレベルに合ってないということになるかもしれません。
おわりに
この記事では、多読(Extensive Reading)の重要性をさせていただきました。先生方の多読指導のお役に立てたら嬉しです。
多読の効果については、以下の文献を参考にしました。本書は、SLAに基づいた効果的な英語学習法が紹介されています。リーディング以外にもリスニング、スピーキング、ライティング、語彙などの学習法が書かれており、指導の参考になります。
【参考文献】中田達也、鈴木雄一編(2022)『英語学習の科学』研究社