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はじめに
コミュニケーション活動は型にはめる
中学校や高校で英語を教えていて、生徒に英語で話させようとしてもなかなかうまくいかない先生や、これから授業でコミュニケーション活動をやっていきたいけれど、どうやって進めたらわからないという先生が知っておくべきコミュニケーション活動が成功するコツをお伝えします。
コミュニケーション活動を成功させるために必要なことは、型にはめるということです。教師からすると、型にはめると授業運営がしやすくなります。また、英語で話すことに慣れていない生徒は、型にはめてあげることで安心してコミュニケーション活動に取り組めるので、結果的に活動の質が高まり、生徒の話す力も伸びていきます。
「これから英語で話しましょう」と言って生徒がほとんど英語を話せないで、教師も生徒も消化不良で何となく気まずい感じなるというのは英語教師によくある失敗かもしれません。私も同様の失敗をしたことがあります。
そもそも英語を話すという雰囲気ができていないのに、いきなり英語で話そうと言ってもなかなかできるものではありません。挙句の果てに、コミュニケーション活動がうまくいかないことを生徒のモチベーションや英語力の問題するといった具合に責任転嫁してしまいがちです。けれども、教える側が工夫をすれば、大抵の場合、うまくいきます。
典型的な失敗例
夏休みにしたことというトピックを例にして、コミュニケーション活動がうまくいかないパターンを見てみましょう。この失敗例と同じようなことをしてしまったことはありませんか?
【失敗例】
Teacher: Make pairs and talk about your summer vacation. Ready. Go.
(ペアで話す)
Studetn A: I went to the sea.
Student B: I went to the sea, too.
この後、ペアの間に沈黙が続き、他のペアも同じような状態か、日本語で雑談をしていて、1,2分が経過…
Teacher: Finish your conversation. Now, open your textbook.
(コミュニケーション活動は行っていないかのような静寂の中で教科書の訳読が始まる)
このように授業を進めていたとしたら、生徒があまり英語を話すことがはなく、活動も停滞しがちになります。
コミュニケーション活動の基本の型
生徒がある程度コミュニケーション活動に慣れていれば、上記のような指示だけでも、生徒はどんどん英語で話すでしょう。しかし、慣れない生徒の場合はそんなにうまくはいきません。けれども型にはめることで、コミュニケーション活動は必ず成功します。ここで紹介する型とは、以下の6つです。
- お手本を見せる
- ペアを組んでいる意識をもたせる
- 誰が最初に話すのかを決める
- 制限時間を設ける
- ペアを変えて反復練習
- クラスの前で発表させる
この型を用いるだけで、生徒が積極的コミュニケーション活動を行うようになります。
お手本を見せる
説明するだけでは、生徒の理解が難しいことが予想される場合は、これからやることを実際に見せると、活動がスムーズに行われます。生徒もやることが明確になるので、安心して取り組むことができます。どうやってやるのかよくわからないという余計な不安があるとコミュニケーション活動そのものに集中できなくなってしまいます。
ペアを組んでいる意識を持たせる
コミュニケーション活動を始める前に、自分が誰とペアなのかを確認させ、ペアのどちらが話し始めるのかを決めさせるだけで、会話がスムーズに始まります。
まずは、英語を話す練習をするために、ペアを組んでいるという意識を持たせること大切です。つまり、パートナーの英語力向上に対して責任があるという自覚が必要なのです。いい加減に取り組むとパートナーに迷惑がかかります。
いちいち説明しなくても、ほとんどの生徒は、意識的、無意識的に自覚していることですが、たまにいい加減にやっている生徒がいると、パートナーの学習機会を奪うなという説教をします(笑)
ペアを組んでいることを意識させるために、物理的にペアであるとわかるようにすれば良いでしょう。例えば、机を向かい合わせでくっつけて、ペア同士がお互いを見合えるようにする方法が基本な方法だと思います。机を動かさずに、ペアワークをするように指示しても、体をパートナーの方に向けない生徒も多く、中途半端なコミュニケーション活動になってしまいます。しっかりと相手を見て話すのがコミュニケーションの基本だという観点からも、机を向かい合わせることには意味があります。
ちなみにですが、授業を授業を始める前に、クラス全体を見渡して、1人になっている生徒がいないか確認しておきましょう。欠席者が複数いるときは、ペアを組めるように予め座席を移動してもらいます。クラスの人数が奇数の場合は、教員がペアのいない生徒と一緒に活動に取り組むこともあります。
じゃんけんで誰が最初に話すのかを決める
いよいよ活動を行っていくわけですが、じゃんけんでペアのどちらが先に話すかを決めておくと、沈黙が続くことなく会話が始まります。ペアを組ませた後に、”Do rock-paper-scissors. Winners/Losers, go first.”と指示し、”Ready, Set, Go!”と言って始めるだけです。
先に話す方の制限時間が来たら、”Switch your roles.” や “Change turns.”と指示し、”Ready, Set, Go!”と言って、ペアのもう1人が話し始めます。
先に話すように割り当てられた方は、「自分が話さないいけない」という気持ちになるので、とにかく何か話そうとするのです。
順番を決めるために、じゃんけんをするのですが、じゃんけんにはアイスブレークの効果もあると感じています。じゃんけんをすることで、ペアとコミュニケーションしやすくなるのです。
他教科の場合は、隣の人とペアを組んで、話し合いをしなさいというとほとんどの生徒はすんなり話し合いができます。ただ、英語で話すとなると、ハードルが上がってしまい、ペアのどちらもフリーズしたままになることがあります。誰が先に話すかを決めることで沈黙を回避できるのです。
制限時間を設定する
メリハリをつける
制限時間があると、メリハリができ、コミュニケーション活動がダラダラと続くことがなくなります。失敗例のように、時間を決めることなく会話をさせると、最初に1文か2文話す程度で終わりにしてしまい、残りの時間はペアの生徒と日本語で雑談をしていたり、黙ってまっているだけになってしまうということがあります。
もちろん、話続けられないのは英語力が不足していることも原因あるかもしれませんが、どんなことでも、終了時間や期間が示されていた方が、挫折せずにそれを続ける可能性が高まるものです。制限時間を設けると、生徒は集中力を高めて、その時間内に何か言おうと必死になります。タイムプレッシャーの効果があるのかもしれません。
制限時間はどのくらい?
中学生でも高校生でも30秒で初めて良いと思います。レベルによって発話量は変わりますが、30秒あれば、その生徒が持つ話す力で表現できることは、ある程度言い切ることができます。最初は30秒も話せない生徒が大多数かもしれませんが、継続すると、1~2か月後には、話続けられるようになります。30秒ができるようになれば、次は1分というように、時間を伸ばしていきます。
最終的には、自分の生徒の様子を見ながら、時間を調整していけば良いでしょう。トピックの話しやすさによっても時間は変わってくると思います。
ペアを変えて反復練習
ペアを変えながら、同じトピックで話すのを繰り返すさせることで、生徒の話す力が伸びてきます。1回目よりも、2回目、3回目の方が正確さも流暢さも向上し、生徒も最初より話せるようになっているのを実感します。1度だけで終わりにすると、成長の機会をうばってしまうことになりますし、生徒にも消化不良感が残ります。
ペアを変えることで、自分が話すときも相手の話を聞くときも、コミュニケーション活動を行う上で重要な要素であるインフォメーションギャップを維持することができます。もう少し実際的なことを言うと、違うペアにすることで、単純に生徒が飽きないで取り組むことができます。
ペアを変えるためのローテションを組んでおくと良いでしょう。ローテーションにはいくつかパターンがありますが、ここでは、clockwise rotationを紹介します。
1回目の活動を終えた後、図のように、ブロックごとに時計回りに移動させるだけで、新しいペアが出来上がります。再度ペアを変えるにはclockwise Rotationを繰り返せば良いのです。
クラスの前で発表させる
ペアワークで練習を繰り返した後、数名に発表させるように計画をしておくと、ペアワークのに取り組む生徒の真剣さが変わってきます。皆の前で発表する可能性があると思うと、しっかり英語で発表できるようにしておこうとして、ペアワークにいい加減に取り組まなくなります。
活動中に机間巡視をして、おもしろいことを言っている生徒やお手本になるような生徒を見つけておきましょう。ひょうきんな生徒がおもしろいことを言って、笑いが起こるクラスの雰囲気が和みます。ただし、毎回同じ生徒ばかり指名しないように注意して、なるべく平等に発表させるようにしましょう。
まとめ
英語の授業で、コミュニケーション活動を成功させるコツは、型にはめることだという考えをかなり詳細に書かせてもらいました。型を意識することで、コミュニケーション活動を行うハードルが格段に下がります。
このように型にはめたコミュニケーション活動を継続していくと、コミュニケーション活動が自動化されて、生徒が英語を話すということに戸惑うことがなくなります。やがて英語の授業でコミュニケーション活動を行うことが当たり前になっていくのです。
この型にはめるというのは、授業全体を考える際にも、大切な考え方です。英語で英語の授業を行っていくうえで、この型にはめるという思考が必要なのです。